今日のテーマ『顔剃』です。
僕が理容技術の中で一番好きでこだわっているのが『顔剃』。
道具にはたいしてこだわってませんが直接お客様の肌に触れる技術なので指先に魂をこめて施術しています。
今まで会ったことのある理容師さんでも『顔剃』が一番好きだっていう人は一人もいなかったような…。会ったっていってもたかがしれてますけど。
だいたい美容師さん含め『カット』にこだわってる人が多いのでは?と思います。
僕が顔剃が好きになった理由。
それは…
『理容業界に入って初めてお客様に褒めていただいた』
事がきっかけです。
まだぺーぺーだった頃、初めてお客様の顔剃させていただく機会がありました。当時はまだスタッフの顔を剃って練習していた時期。
ある日突然上司が小声で『あのお客さんの顔剃やってみろ』と。
『え!?まぢすか!?』
うなずく上司。
『わかりました』
かなりビビりましたが決断しました。
小柄なご年配の方でした。髭も濃いめ。
もうめっちゃ緊張しまくりで手汗びっしょり&手ふるえまくり。
手のふるえを抑えようと深呼吸しまくり全神経を集中させ施術しました。
なんとかやり遂げ上司と交代。
全施術が終わりお客様お帰りになられる時出口に向かわず僕の方へ歩み寄ってきました。
そして僕の手をとり…
『こんな気持ちのこもった顔剃は生まれて初めてだ。君、手を大事にしなさい。また来るから頼むよ』と。
僕は唖然としてしまって…
『あ、ありがとうございます!!…』
周りのスタッフは『すげぇーじゃん!!お客さんちょっと泣いてなかった!?おまえ今日からゴッドハンドって呼ぶわ!!』
『いやいや、そんな大袈裟な~やめてくださいよ~』
(実は内心『ゴッドハンド』ってのが嬉しかった気が笑)
その日を境にゴッドハンドになりました笑
まあ冗談はさておき…
それから数年経ちそんなことはすっかり忘れていました。
世の中は『美容ブーム』で若年層の理容室への利用も減り、1000円カットの進出もあり僕は理容の未来を悲観していたんです。自分も美容室へ行って髪切ってましたしね笑
自分自身の理容師として将来像がまったく見えなくて…
全然うまくならないし自暴自棄になっていました。
そんなある日お客様の施術をしている時…
『いや~君はうまくなるよ。剃刀の使い方が上手だ。腕のいい人は剃刀のあて方がうまいんだよ。君はセンスがいい。自分を信じなさい』
と。
その時思い出したんです。
初めて勤めた店のオーナーが『五年くらいやったらその人の味がでてくる』って。
まさか!?
あの初めて顔剃をしたお客様に言われたこと、オーナーが言ってたことがつながり自分の進むべき道がみえたんです!!
『カットは美容師でもできる。顔剃は理容師にしかできない。ならそれを武器にしよう』と。
それからもうカットなんてどうでもよくなり、顔剃を極めることに集中しました。
集中しだしたら理容師として自信を持ててきてやりがいも感じ『顔剃』だけは誰にも負けないようにしようと頑張りました。
数多ある理容室で顔剃って『ついでにしてる』感があると思うんです。カットして『ついで』にシャンプーして顔剃してみたいな。
カットはその人その人で好みがあると思います。
1000円カットで満足する人もいるし世界一カットのうまい人にやってもらっても気にいらないかもしれない。
でも顔剃は違う。
お客様の肌に直接手をふれ、剃刀をあて施術していきます。
シャンプーと同じで技術差がお客様にダイレクトに伝わる施術です。お客様の肌に直に伝わる手の感触、刃のあたりぐあい、なめらかさ…繊細さが求められます。顔の形は千差万別、肌の凹凸にあわせて剃刀を滑らせていく。
お客様の中にはイボ、ボコっとしたほくろがあったり、シワ、手術痕、お肌の状態、髭のはえ方様々です。
簡単にやっているように見えるかもしれませんが…
正直かなり神経をつかいます。
僕はそのわずかその10分ほどに全神経を集中させます。
カットは他の人に任せても顔剃は任せません。
自分のもっともこだわっている部分だから。
『理容師』にのみ許されている顔剃。肌に刃物をあてていいのは医者と理容師だけです。
※タトゥーの彫り師とかピアスの穴あける人もいますけど。
医者と同じようにお客様の命をあずかっている感覚で僕は施術している。
首に剃刀あてますからね。万が一ミスったら死んでしまいます。
その心構えで施術しています。
たまーに『顔剃いくらするの?…たけぇーな』っていうお客様います。
堂々といいます。
『首に剃刀あてるんですよ?僕はあなたの命を預かるんです。』
以前書きましたが他の理容室で『婦人顔剃1000円』ってはってあるのをみてすごい残念に思う。
理容師にしかできない技術。
もっと価値を高めたい。
kajiji
freepeace代表
0コメント